ホワイトボードの図が「動き出す」:Claudeと一緒に授業の教え方を練る
「板書の図は毎回同じなのに、生徒がいつも同じところでつまずく」——教える仕事をしている人なら覚えがあるはずです。Claude公式のユースケース紹介に、教え方をClaudeと一緒に考えながら、会話の中にインタラクティブな図がそのまま流れ込んでくるという使い方が載っていたので、整理します。チャット内で動くビジュアルが生成される「カスタムビジュアル」機能の好例です。
何ができるのか
「どこで生徒が詰まるのか」「どんなフレーミングなら伝わるのか」「いつものスケッチは本当に機能しているのか」——そうした授業準備の思考を、Claudeが一緒に進めてくれます。特徴的なのは、アドバイスの文章のすぐ隣に、その言い換えを具体化したビジュアルがストリーミングで描かれていくこと。
この「描かれる図」は2つの役割を同時に果たします。ひとつは、あなた自身の言語化を鋭くすること——図が動くのを見ると、授業のトークスクリプトが自然と書ける。もうひとつは、生徒がそのまま使える教材の初稿になること。準備セッションから教室のツールへ、望めばそのまま発展させられます。
実際のプロンプト例
紹介例は、来週「需要と供給の均衡」を教える教授。使ってきたスケッチを添付して、こう相談します。
来週、需要と供給の均衡を教える準備をしています。これが使ってきたスケッチです——生徒は曲線の交点までは追えるのに、なぜ価格がそこに向かうのかが分かっていない。もっと良いフレーミングは? それと、交点だけでなく「均衡に向かう圧力」を見せる方法はありますか?
必須の材料は、ホワイトボードの写真・スライド・描いてきたものの説明のどれか。Claudeはあなたのフレーミングを読んでそこから発展させるので、返ってくるものは「あなたの説明の置き換え」ではなく「あなたの説明の拡張」になります。任意で、生徒が典型的につまずくポイント(特定の誤解、繰り返し出る質問)を伝えると、リフレーミングがその詰まりどころを中心に組まれます。使用モデルはSonnet 4.6です。
返ってくるアウトプット:診断 → 言い換え → 動く図
返ってくるのは、ビジュアルが織り込まれた「教え方についての会話」です。紹介例でのClaudeの診断はシンプルで本質的——静的なスケッチが生徒を置き去りにするのは、「動き」についての概念なのに図が動かないから。そのうえでリフレーミングを提案し、その言い換えが着地する場所に、インタラクティブ版が流れ込んできます。あなたの曲線はそのまま、生徒がドラッグするスライダーが付き、価格をどこに設定しても数値の読み出しが書き換わる。
公式の言い回しを借りれば、「グラフはまず思考の小道具。それをどう使うかは二の次」。授業準備の壁打ち相手として機能した後で、教材化の道が開けている、という順序です。
フォローアップ:図を「育てる」3つの方法
① 1点だけ変えて描き直させる。「スナップボタンの前にステップを追加して:生徒がまず価格がどちらに動くか予想し、クリックして確かめる。予想と実際の結果を並べて表示して」——インタラクションの変更を言葉で伝えれば、図が更新されます。
② 図の中のボタンが次のシナリオを呼ぶ。生成されたグラフの下のボタンは、クリックするとフォローアッププロンプトを送る仕掛けになっています。「需要が急増したら? 曲線がシフトして新しい均衡がどこに落ち着くか見せて」——元の均衡グラフは上に残ったまま、2つ目のビジュアルが組まれます。
③ 同じ形式を別の概念に転用する。「これを価格の下限規制・上限規制用に描き直して。同じ"予想してからスナップ"形式で、ただし今度はギャップが閉じない理由を見せて」——うまくいったインタラクション形式を、次の単元に使い回せます。
うまく使うためのコツ
プロンプトの言葉が出来を決める。「交点は追えるが、なぜ価格がそこに行くかが分からない」という一文が、どの誤解を中心に図を組むべきかをClaudeに伝えます。汎用的な依頼からは汎用的な図しか出てきません。使ってきたものを添付し、詰まりどころを言葉にする——それだけで、そのギャップに合わせた図になります。
図を自分の理解と突き合わせる。「予想してからスナップ」という設計は、あくまでClaudeの仮説です。数人の生徒で試して、予想せずクリックだけして進んでしまう、余剰ゾーンの表現が伝わらない——そんな観察が得られたら、それをClaudeに伝える。次のバージョンは、あなたが実際に見たものを中心に組み直されます。
図が完成に近づいたら、次の一手。ビジュアルにホバーすると選択肢が出ます。「Save as Artifact」でホワイトボードの下書きが、生徒が自分で開けるリンクに変わります。「Create skill from visual」を使えば、Claudeがこのインタラクションの形を記憶——次回は別の概念を持ち込むだけで、同じ「ドラッグ→予想→確認」形式の教材が、設計をやり直さずに手に入ります。
まとめ
以前紹介した「教科書1見開きからレベル別教材を作る」が教材の量産だとすれば、こちらは教え方そのものの質を上げるユースケースです。核心は、「動きの概念は動く図で教える」という当たり前を、準備の会話の中で実現してしまうこと。そして、うまくいった図はアーティファクトとして生徒に配れて、うまくいった形式はスキルとして次の単元に転用できる。学校の先生に限らず、社内研修の講師や、顧客向けに製品の仕組みを説明する営業・CSにも、そのまま効く型だと思います。
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