財務スプレッドから与信稟議書まで:Cowork × Claude for Excel × Wordで回す融資更新審査
木曜に審査委員会。手元には3年分の決算書、作りかけのExcelスプレッド、金曜に営業担当から届いたコベナンツ(財務制限条項)一式——そして前回審査した先とはどうも様子が違う借り手。融資審査の現場でよくあるこの状況を、Cowork → Claude for Excel → Claude for Wordの連携で一気通貫に処理するユースケースがClaude公式に載っていたので、整理します。
ワークフローの全体像
流れはこうです。まずCoworkが、S&P Capital IQコネクタ経由で借り手の開示資料と同業比較(ピアスプレッド)を取得し、案件フォルダにある審査用ワークブックを読み込みます。そのうえで、どの財務比率が行内ポリシーの閾値に抵触しているか、モデル内のどの前提が決算書の実態と合っていないかを指摘。そのブリーフを持ってClaude for Excelでスプレッドを更新しコベナンツを検証し、最後にClaude for Wordで稟議書テンプレートを開きます。
重要なのは、ExcelからWordへの引き継ぎで会話のコンテキストが継承されること。稟議書を書き始める時点で、Claudeはどの比率が動いたかをすでに知っています。そして公式が明記している原則——「スプレッドの取得と比率計算はClaude、与信判断はあなた」。
実際のプロンプト例
Acme Manufacturing — 2,500万ドルのリボルバー更新、木曜に委員会。スプレッドに触る前に、この与信の全体像を説明して。
ステップ:
S&P Capital IQから3年分の財務とピアスプレッドを取得
案件フォルダの審査ワークブックを読み、ポリシーに抵触する比率にフラグ
モデルの前提のうち、決算書と合わないものを指摘
Excelに持ち込めるブリーフを作成——セル参照、変更箇所、その理由
何かを変更する前に、まず例外事項を見せて。
必要なセットアップ
必須は3つ。
①審査ワークブックを含む案件フォルダの添付、②S&P Capital IQコネクタの有効化、③Claude for ExcelとClaude for Wordのアドインのインストール(スプレッド更新と稟議書ドラフトはここで行われます)。使用モデルはSonnet 4.6です。
Claudeは標準的な審査ループ——比率分析、コベナンツ遵守チェック、リスク格付けの推奨、正式な稟議書ドラフト——をそのまま実行できます。ダウンサイドケースが必要なら、Financial AnalysisプラグインがDCF、類似企業比較、ストレステストのスキルを追加してくれます。
返ってくるアウトプット
紹介例のブリーフは、審査担当がそのまま動ける粒度です。
ポリシーとの対比では、DSCR 1.42x(最低1.25xをクリア、ただし前回1.68xから低下)、有利子負債/EBITDA 3.1x(上限3.5x以内、ただし2.4xから上昇)、固定費カバレッジ比率(FCCR)1.18xが最低基準1.20xに抵触、流動比率1.35x(基準クリア)、と各比率の合否と前回比を一覧化。
そして委員会向けにフラグすべき例外2件が、セル参照付きで示されます。
1つ目は FCCR!D14 ——FCCRが2bp差でコベナンツ抵触。原因は3月に始まった新しい設備リース(年84万ドル)で、リース料は固定費に入ったのにFY24のベースには含まれていない。リース前の1四半期分を足し戻すとFCCRは1.23x。ウェイバー(適用免除)申請にするかコベナンツの再設定にするかは、あなたの判断、と明記されます。
2つ目は Assumptions!B22 ——FY26の売上成長率を8%と置いているが、借り手自身のQ4コメントでのガイダンスは「4〜6%のミッドシングル」。しかも営業担当の訪問メモには、最大顧客との契約がQ2に再入札になるとあり、それはモデルに入っていない。
ブリーフの最後には、Claude for Excelのサイドバーにそのまま貼れる指示文まで付いてきます。「FCCR!D14を一緒に確認して、売上±5%・リース前提±100bpのコベナンツ余裕度ビューを作って」という具合です。スプレッドを確定したらWordで稟議書テンプレートを開けば、会話が引き継がれているので「与信サマリーと例外セクションをドラフトして」の一言で書き始められます。
フォローアップの3例
前回審査との比較:「FY24審査から何が変わった? レバレッジ、カバレッジ、運転資本」とCoworkに聞く
前提を借り手の発言と突き合わせる:「私の8%成長は強気すぎる? 借り手はQ4のナラティブでパイプラインについて実際何と言っていた?」
ダウンサイドケースの構築:ベースケース確定後、Claude for Excelで「新しいタブにダウンサイドシナリオを。売上-10%、粗利率-200bp、営業費用は横ばい。コベナンツがどこで破れるか見せて」
うまく使うためのコツ
Coworkの最後に「Excel用ブリーフ」を頼む。セル参照とポリシー例外を1段落にまとめてもらい、それをClaude for Excelのサイドバーに貼る。チャットを遡るより速くて確実です。
セル参照はクリックして確かめる。ExcelサイドバーでClaudeがFCCR!D14を挙げたら、クリックすればExcelがそのセルにジャンプ。変更に同意する前に、数式と入力値を自分の目で確認します。
Excel→Wordの引き継ぎを活かす。Wordで稟議書テンプレートを開いた時点で、Claudeはどの比率が動き、どの例外を表に出すと決めたかを知っています。案件の説明をやり直す必要はありません。
スキルとして保存する。更新審査は毎サイクル同じループです。1案件でCoworkの会話がうまく回ったらスキル化しておけば、ポートフォリオの次の更新はワンクリックで同じ流れから始められます。
まとめ
このユースケースが示しているのは、Claudeが単体のチャットではなく、Cowork(収集と例外検出)→ Excel(モデル更新と検証)→ Word(稟議書ドラフト)という実務の動線そのものに沿って動く姿です。しかも各ステップで「変更前に例外を見せる」「セルは自分で確認する」「ウェイバーか再設定かは人間が決める」と、判断ポイントがきちんと人間側に残っている。金融機関に限らず、Excelのモデルを検証してWordの報告書に落とす、という仕事をしている人すべてに参考になる設計だと思います。
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