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すべてのSaaSが“AI値上げ化”する時代、企業のIT部門の取るべき対策は?

すべてのSaaSが“AI値上げ化”する時代、企業のIT部門の取るべき対策は?

SaaSのAI搭載が進む一方で、価格上昇や機能の重複が企業のITコストを圧迫。IT部門には、AIを活かせる業務構造への再設計と、単機能SaaSの統合・見直しが求められていきます。

Yoshiya Takabayashi avatar
対応者:Yoshiya Takabayashi
一週間前以上前にアップデートされました

■ AI搭載SaaSの時代が到来 全てのSaaSにハイエンドのAIが必要か?

AIの進化とともに、SaaS製品にも次々とAI機能が搭載されるようになっています。
一見すると「業務の効率化が進む良い流れ」のように見えますが、その裏側では価格上昇機能の重複という問題が静かに進行しています。

特に、Copilotのように全社レベルで一括提供されるAI機能は、ユーザーの作業効率化には貢献しますが、既存の非効率な業務プロセスを温存したまま、高コストな“AI付きツール”が社内に乱立する状況を生みかねません。

つまり、AI搭載SaaSは利便性を高めると同時に、新たな課題を企業にもたらしていると思われます。

■ Copilotの限界―“作業効率化”と“プロセス改善”は別の話

例えば、ある製品のCopilotの法人向け価格は、1ユーザーあたり月額4000円以上。
ベースプランと組み合わせると月額9000円以上となり、1,000ユーザーで導入すれば年間で数千万円を超えるような追加コストが発生することもあります。

Copilotはたしかに、メール、議事録、資料作成といった“作業の効率化”には効果を発揮します。
しかしこれは、あくまで
エンドユーザーの単位での改善にとどまり、業務全体のプロセス構造の見直しには直結しません。

■ “見えないコスト爆弾”──100以上のSaaSがもたらす圧迫

大企業では100を超えるSaaSが稼働していることも珍しくありません。
仮にそれぞれがAI対応で月額1,000円ずつ値上げされたとすれば、かなりの追加コストになります。しかもこれは、“AI対応版リリース”という名目の実質的なアップセルによって進行していきます。

標準的な業務支援のためのAIの動きは必要でしょうが、ハイエンドのAIがどこまで必要かは検証する必要があります。

■ Atlassianは“AI搭載=値上げ”の逆を行く

Atlassianは先日の年次イベント「Team '25」で、AI機能 Rovo をPremiumプラン以上の製品に無料で同梱する方針を発表しました。
これは、AIを各製品の中心に据えつつ、あえて追加コストを求めないという大胆な戦略です。

AI搭載による価格上昇が常識になりつつある中で、強く差別化された提供モデルと言えます。

■ “ちょっとしか使ってないSaaS”は意外と多い

多くのSaaSでは、「実際に使われている機能はほんの一部」というケースが非常に多く見られます。
ある企業では、人事系SaaSの評価フィードバック機能のみを活用しており、既存のプラットフォームに移管することで年額150万円の削減に成功しました。

“専門的に見えるが、実際は汎用機能しか使っていない”というSaaSは見直しの対象です。
AI対応=残す理由にはならず、むしろ統合と削減の視点が今こそ必要
です。

■ 単機能SaaSはAIエージェントとプラットフォームに吸収されていく

定型レポート、FAQ応答、議事録作成など、かつては個別のSaaSが担っていた領域は、今やAIエージェントに組み込まれ、他の業務プロセスの中で自然に実行されるようになってきています

つまり、「アプリを使う」から「エージェントに任せる」時代への移行が進んでおり、単機能SaaSは将来的にその役割を終えていく可能性が高まっています。

こうした機能は今後、大型プラットフォーム上でアドオンやマイクロカスタムプロセス(MCP)として提供されるのが一般的になるでしょう。
さらに、既存のAI基盤を活用すれば、自社のAI開発・運用コストの削減にもつながる可能性があります。

ちなみに、カスタマーサポートツールのIntercomはSalesforceやzendesk等へFinというAIをadd-on化することも可能です。

社内でトレーニング済みのAIエージェントを複数のシステム横断で活用できる構造が、今後増えていくでしょう。

■ チャットツールはAI搭載でも“ハブ”にはなれない

チャット製品にAIを組み込む動きも増えていますが、チャットは情報が流れやすく構造化に不向きなため、万能な業務インターフェースにはなり得ません。

リアルタイム性やチャネルの柔軟性には優れていますが、多数のスレッド・返信・通知により情報が埋もれやすく、履歴の追跡も困難になります。

そのため、チャットは通知や軽微な操作のトリガーとして限定的に活用し、
実処理や記録は構造化された業務システム側に任せる“役割分担型”設計が現実的です。

チャットツールで仕様などの会話がされることはドキュメントの更新等の観点からもリスクが高いのです。

チャットツール運用における問題点

■ IT部門に求められるのは、“足す”でも“引く”だけでもなく“立体的に再構成する”視点

これからのIT部門に求められるのは、新しいツールを導入することでも、単に減らすことでもありません。
本質的に必要なのは、業務プロセス全体を立体的に捉え、再設計する力です。

たとえば:

  • プロセスはどこからどこまで流れているのか

  • ユーザーはどのツールを跨いで作業しているのか

  • どこで再入力・重複作業・切り替えストレスが発生しているのか

  • この専門的なAIはどの業務で使うか

これらを俯瞰し、「業務の断面図」を描き直す視点が不可欠です。

✅ 最後に:AIを活かせる構造に変えていく

SaaSにAIが搭載される流れは、今後さらに加速します。
だからこそ重要なのは、「AIがあるから便利」ではなく、「AIが価値を発揮できる構造になっているか?」という問いです。

今後は、AI基盤の中央集権化と機能の専門化が進むことで、IT部門には、それらをどう選定し、組み合わせ、統制するかという新たな設計・管理能力が求められてくるでしょう。

このとき、必要になるのは:

  • 単機能SaaSの統合

  • AI機能を横断的に再利用可能な形で各システムに埋め込める構造にする

  • IT部門がAIを横断的に活用することを前提とした再設計に踏み出すこと

今後のIT戦略は、「ツールの導入」ではなく、「プロセスのリデザイン」が必要と考えます。IT部門はよりAIの活用において重要なプロセス改善部門となる必要があると考えます。

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