最近はAI搭載をうたうSaaSが増え、「とりあえずAIがあれば良さそう」と感じる場面も多くなりました。ただ、大企業や日本企業の現場では、セキュリティや統制、運用の説明が難しく、導入後に止まってしまうケースも少なくありません。SaaSをAI前提で検討する際に押さえておきたい実務視点を整理し、SaaS選定でのプロンプトの例を以下に提示します。
また、Atlassian Rovoを例に、現場で使い続けられるAIの条件を考えていきます。
SaaS検討時に使う
AI向け評価プロンプト(完全版・Enterprise / AI前提)
SaaSを検討する際、以下の観点で日本企業(特に大企業)が中長期で利用できるかを評価してください。
1. 事業・ガバナンス視点(継続性)
創業者・経営陣の国籍/経歴/過去のEXIT
投資会社・ラウンド履歴(戦略投資か財務投資か)
過去5年の売上・ARR成長推移
黒字化状況・資金枯渇リスク
買収リスク/買収後のプロダクト継続性
評価視点
→ 3年後・5年後も「普通に使えている」可能性が高いか
2. セキュリティ・コンプライアンス
SOC2(Type I / II)
ISO27001
FedRAMP(対応有無・レベル)
GDPR / DPA
Trust Centerの有無と内容の具体性
日本企業向けセキュリティ資料の出しやすさ
評価視点
→ 情シス・監査・法務で止まらないか
3. プロダクト思想・成熟度
IT部門向けか、現場主導か
単機能SaaSか、業務横断を前提としているか
AIが
補助(検索・要約)
判断(提案・優先度付け)
実行(自動化・エージェント)
のどこまで踏み込んでいるか
AIが運用コストを下げる設計か、設定を増やす設計か
4. 機能評価(表面的比較を避ける)
機能一覧(公式ベース)
他社との比較
実際に使われる機能/死蔵されやすい機能
権限・ロール設計の柔軟性
API / Webhook / 連携の現実的制約
5. ユースケース・運用視点
想定ユースケース(理想)
日本企業での実ユースケース
導入初期/定着期/拡張期での使われ方
利用部門拡大時の摩擦
解約理由(可能なら)
6. 導入企業の質
導入社数だけでなく
業種
規模
IT成熟度
ロゴ掲載企業が本当に使っているか
SI主導か、プロダクト主導か
7. コスト・契約条件
初期費用・最低契約期間
課金体系(ユーザー/機能/イベント/AI)
AI機能は標準かオプションか
値上げ履歴・頻度
解約時のデータエクスポート可否
8. 内製 vs SaaS 判断
内製した場合の
開発コスト
運用コスト
属人化リスク
SaaSを選ぶことで
考えなくてよくなること
ブラックボックス化する部分
9. AIアーキテクチャ/独自フレームワーク
AIは後付けか、プロダクト中核か
独自AIフレームワークの有無
(ルーティング/評価/ガードレール)利用しているLLM
OpenAI / Anthropic / Google / OSS 等
マルチLLM対応か、ベンダーロックインか
モデル切替時の影響
プロンプト管理・評価(versioning / A/B / ログ)
顧客データの学習利用有無(opt-out可否)
10. Enterprise利用適性
Enterpriseプランは価格だけか、機能的に別物か
SSO / SCIM / RBAC の粒度
監査ログ(AI利用含む)
データ保持期間・リージョン選択
Private / Dedicated / VPC 対応
SLA / サポート体制(日本対応)
情シス承認フローへの耐性
11. 大企業 × AI で詰まりやすい点
AIの誤回答・幻覚への設計
人レビュー前提か、自動実行前提か
業務ログ・監査との相性
現場裁量と統制のバランス
「AIが説明できない」問題への対処
Atlassian(Rovo)を例にした具体評価
Rovoの中核:Teamwork Graph
Jira / Confluence / JSM 等に分散した人・課題・ドキュメント・履歴・関係性をグラフとして保持する基盤
単なる検索やRAGではなく仕事の文脈そのものを構造化
Atlassian Rovoでレビューを先回りする:レビュアーの思考を再現するAI活用の新しいユースケース
重要な構造
LLMの上にRovoがあるのではなくTeamwork Graphの上にLLMがある
AIフレームワークとしての特徴
権限・役割・関係性をAI実行前に確定
「誰が・どの立場で」聞いているかを前提に回答
権限を越えない検索・要約
部署・役割ごとに答えが変わるAI
→ EnterpriseでAIが暴走しにくい設計
Enterprise適性(Atlassian)
Enterprise Cloud / Atlassian Guard など
統制レイヤーが明確SSO / SCIM / RBAC / 監査ログ:強い
データ管理・リージョン選択あり
日本企業での実績が多く説明しやすい
まとめ
AI比較は「LLMの賢さ」では判断できない
業務文脈をどこまで構造化しているかがEnterpriseでは決定的
Rovoの本体はAIではなくTeamwork Graphという下の層

