最近の商談の中で感じるのは、顧客対応プロセスでの顧客からの問い合わせに対して、すべてを全力で人の目で確認し、人手で返信している企業が今も少なくないということです。
こうした企業では、問い合わせを受け付けた段階で「どのような内容か」「どの程度の重要性や緊急性があるか」といったトリアージ(優先順位付け)を行う仕組みが存在しないため、AIによる自動化やテンプレートの導入が非常に難しいです。受付段階を人間の目でやっているうちはAIの導入は無理と考えても良いと思います。
実際まだ多くの会社ですべての問い合わせに対して全て人力で一件ずつ目視確認し対応するという“全力全件対応”の運用から脱却できずにいるのが現状です。
このような運用では、様々なリソースは常に消耗し、担当者の負荷も高く、本来優先すべき問い合わせに集中できないまま、すべての問い合わせが“同じ重さ”で扱われるという非効率が発生します。
AI時代において求められるのは、単なる作業の自動化ではなく、「どの問い合わせにどう対応すべきか」という判断を仕組み化することです。
つまり、対応作業の前段に価値に基づく“判断”を組み込むことで、限られたリソースの中でも最大限の成果を生み出す運用が可能になるのです。
🧭 トリアージ基準の設計方法
効率的な対応を実現するためには、以下のような基準によるトリアージ設計が有効です:
緊急度
└ 即時対応が求められる内容か(例:システム障害、重大なクレーム)重要度
└ 顧客の契約規模や影響度、企業への影響が大きい内容か難易度・専門性
└ 一般的なテンプレートで対応できる内容か、専門知識が必要か顧客種別
└ VIP顧客・大口顧客・新規顧客などの属性による対応優先度の調整問い合わせチャネルや文面の傾向
└ 怒りの感情や否定的な表現が強いかどうか、FAQ参照済みかなど
これらをスコアリング(点数化)して対応ランクを自動的に分類する仕組みを構築すれば、トリアージを一部または大部分を自動化できます。
🚀 自動化導入の初期ステップ提案
トリアージと自動対応を実現するには、以下のような段階的導入が効果的です:
問い合わせログの分析
過去の問い合わせをカテゴリ分けし、よくあるパターンを抽出する。過去の問い合わせを分析するとおおよそ数種類の定型的な返答が直ぐに作成することができます。
ルールベースの分類基準の設計
簡単なキーワード抽出・タグ付けなどで自動仕分けの試行。
テンプレート返信の整備
内容別に人手で対応していた返信を分類し、返信テンプレート化。
AI分類モデルの導入
文脈理解が必要な問い合わせは、Copilot等を使って優先度分類。
人+AIのハイブリッド運用
最初はAIが提案し、人が承認するフローにし、精度が上がったら一部を自動化。
フィードバックループの構築
回答の品質や顧客満足度を継続的に測定し、AIの分類精度やテンプレの改善に活かす。
🎯 まとめ
作業の前に「判断の仕組み」を組み込むことが、AI時代の顧客対応において最も価値ある設計となります。
全力での全件対応という平等性の幻想を捨て、価値ベースで“誰に、どのように、どこまで対応するか”を設計・仕組み化していくことが、競争力のあるカスタマーサクセスの第一歩になります。