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Jira のスペース(プロジェクト)が乱立するのは開発標準やバリューストリーム設計の不在

Jira のスペース(旧プロジェクト)が乱立する背景には、「開発標準」と「バリューストリーム設計」の不在があります。プロダクトの継続的な価値提供を支える“スペース”という概念を前提に、なぜ乱立が起きるのか、どの単位でスペースを作るべきかを考えます。

1か月以上前に更新

気づいたら jira のスペース(プロジェクト)が増えすぎて、どれを見ればいいか分からない


多くのチームで聞く悩みですが、これは jira の設定が悪いのでも、メンバーのマナーが悪いのでもありません。
原因の多くは、「開発標準がない」か「あっても運用されていない」ことにあります。

加えて、最近の Jira では「プロジェクト」から「スペース」という名称に変わりました。
この名前の変更の意図を理解していないと、従来どおり「なんでも新規プロジェクトを作る」という発想のままになり、結果としてスペース乱立につながります。

本記事では、

  • なぜスペース(プロジェクト)が乱立するのか

  • 「スペース」という概念が何を意味しているのか

  • どの単位でスペースを作るべきか

を整理し、今日から着手できる実践的な対策をまとめます。

1. 「プロジェクト」から「スペース」へ:名前の変更が示すもの

1-1. プロジェクトは「始まりと終わり」がある活動

従来の「プロジェクト」という言葉は、

  • 始まりがあり

  • 終わりがあり

  • 期間も目的も限定されている

といった、一時的な活動をイメージさせます。
ウォーターフォール型の開発や、期間限定の案件には適した概念です。

1-2. プロダクト開発は「終わりのない継続活動」

一方で、今の多くのプロダクト開発は、

  • リリースして終わりではなく、

  • ユーザーの反応を見て改善し続ける

  • 日々、小さな価値を出し続ける

といった「終わりのない」活動が前提です。
ここで重要になるのは、「プロジェクト管理」よりも、「バリューストリーム(価値の流れ)をどう設計して支えるか」です。

1-3. その永続的な活動を支える場が「スペース」

この前提から、Jira は「プロジェクト」ではなく「スペース」という名前に変わってきています。

  • スペースは、一時的な案件ではなく

  • プロダクトやサービスの価値を継続的に生み出し続ける「場」

  • チームの活動・ナレッジ・タスクが集まる「長期的な器」

という位置づけです。

つまり、本来の意図としては:

「簡単に Jira スペース(プロジェクト)を増やす」のではなく、
「そのスペースがどのバリューストリームを支える器なのか」を考えてから作るべき

というメッセージが込められています。

2. なぜ jira スペースは乱立してしまうのか

2-1. 「誰が・いつ・何のために作っていいか」が決まっていない

よくあるパターンは次の通りです。

  • 新しい機能開発のたびに、とりあえず新スペースを作る

  • チーム再編のたびに新しいスペースを作る

  • 外部ベンダーごとに別スペースを作る

どれもその場では合理的に見えますが、
「バリューストリームとしてどう位置付けるか」の視点がないまま増やすと、半年〜1年でカオスになります。

本来は、最低限次を決めておく必要があります。

  • スペースを作ってよいロール(例:プロダクトオーナー、開発マネージャーなど)

  • スペース新設の条件(例:独立したバリューストリームとして継続するものに限る)

  • 既存のスペースで表現できないかを検討するフロー

2-2. バリューストリームの設計がない

「スペース = バリューストリームの器」と考えると、
先に決めるべきは「器の数」ではなく「価値の流れの構造」です。

例:

  • プロダクト A のユーザー価値を生み出す流れ

  • 社内 IT サービスの申請〜対応の流れ

  • 顧客サポートからフィードバックをプロダクト改善へ繋ぐ流れ

これらの流れが整理されていないと、
「とりあえずチームごと・案件ごとにスペースを作る」ことになり、乱立につながります。

2-3. 開発標準が jira 設定に落ちていない

  • Confluence には「標準」が書いてあるが、誰も見ていない

  • ワークフローやフィールドがチームごとにバラバラ

  • スペースの作り方が属人化している

こうなると、現場は結局「自分たちのやりやすい形」でスペースを作り始めます。
結果として、「バリューストリーム」ではなく「人や組織の都合」でスペースが増え続けます。

3. どの単位でスペースを作るべきか

3-1. 基本は「バリューストリーム/価値提供単位」

おすすめは、“価値の流れ単位”でスペースを設計することです。

例:

  • プロダクト単位

    • 例:ユーザー向けWebサービス、モバイルアプリなど

  • サービス単位

    • 例:社内 IT サービス、社内ポータル、コールセンター支援など

  • 大きなイニシアティブ・プログラム単位

    • 例:DX 推進プログラム、基幹システム刷新 など

短期の案件や一時的なタスクは、
基本的には同じスペース内で Epic / コンポーネント / ラベル などで表現します。

3-2. 「とりあえず新スペース」は禁止ワードにする

運用ルールとしてはシンプルに:

  • 「バリューストリームとして説明できないもの」は新スペースにしない

  • 「説明が難しいもの」は既存スペースの中で表現方法を工夫する

くらいにしてしまうのが現実的です。

4. 運用ルール:アーカイブよりも「そもそも増やし方」を整える

以前は、

  • 一定期間動いていないプロジェクトはアーカイブする

  • 半年に一度棚卸しする

といった“お片付け”の運用が非常に重要でした。
今もできればやったほうがよいのは変わりませんが、

「スペース = 永続的な活動を支える器」
という前提に立つと、

  • そもそも簡単に増やさない

  • バリューストリーム単位で設計する

ことの方が優先度は高くなります。

アーカイブはあくまで「結果として不要になったスペースを整理するための手段」であり、
本当に大事なのは最初の設計と作成ルールです。

5. まず何から始めるか(小さく始めるステップ)

  1. 今あるスペースをざっくり分類する

    • プロダクト単位 / サービス単位 / 一時的案件 / よく分からないもの

  2. 「これはバリューストリームと言えるか?」という目線で見てみる

  3. 新規スペース作成の簡単なチェックリストを作る

  4. 「バリューストリーム単位でスペースを作る」という方針をチームで合意する

アーカイブや整理は、これらが少し回り始めてから、
優先度の低いものから順に検討していけば十分です。

まとめ

  • Jira の「スペース」という名前は、「終わりのある案件」ではなく「継続的な価値提供の場」を意図している

  • 乱立の原因は、ツールよりも「開発標準」と「バリューストリーム設計」の不在

  • 新スペースを作る前に、「これはどの価値の流れを支える器か?」を説明できるか確認する

  • アーカイブよりもまず、「増やし方」と「単位」を整えることが重要

「どのスペースを見ればいいか分からない」という状態は、
裏を返せば、バリューストリームの設計と開発標準を見直すチャンスです。

ツールをいじる前に、「スペースとは何のための器か?」という原点に立ち返って設計し直してみてください。
そこが整理されると、Jira は一気に“価値の流れを見える化するための基盤”として機能し始めます。

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