AtlassianはTeam '26(2026年5月開催)で、「Intelligence is the engine, Context is the fuel(知性はエンジン、文脈は燃料)」というメッセージを掲げ、AIネイティブ組織に向けた大規模なアップデートを発表しました。
今年の特徴は、単体の派手な新製品ではなく、Teamwork Graphを中心とした“文脈基盤”の強化と、Rovo AIによる自律型エージェント機能の進化です。
さらに、Jira Service Managementを中心とするService Collectionでは、Incident Command CenterやSolution Composerなど、ITSM・ESM運用を大きく変える機能群も公開されました。
本記事では、Team '26で発表された内容を以下のテーマごとに整理して紹介します。
目次
✅ Atlassian Team '26 発表内容まとめ
Teamwork Graph と Atlassianの新戦略
Collections体系の完成(5本柱)
Jira Service Management / Service Collection強化
Incident Command Center / Prevention Center
Rovo Chat MAX・Memory・Agents in Jira
Rovo Studio GA
Teamwork Graph・MCP・CLI強化
セキュリティ / ガバナンス / Isolated Cloud
ITSM活用とナレッジ循環設計
Roadmapまとめ
AI戦略:Teamwork Graph が“AI時代の競争優位”になる
Atlassian Team '26で最も強調されたメッセージは、CEO Mike Cannon-Brookes氏による次の言葉でした。
「モデルはコモディティだ。スマートさはトークン単位で買える。だから差別化はモデルではなく、文脈だ。」
Atlassianは、AI時代の競争優位を「LLMそのもの」ではなく、“組織固有の文脈(Context)”に置いています。
その中心となるのが Teamwork Graph です。
Teamwork Graphとは?
Teamwork Graphは、Jira・Confluence・JSM・Slack・GitHub・Google Drive・Salesforceなど、組織内外の仕事データをリアルタイムで接続するAtlassianのデータ基盤です。
主な特徴
毎週数十億件のオブジェクトを取り込み
10分以内の更新を目標としたリアルタイム同期
1,500億以上のコネクションを保持
SaaS横断で“仕事の関係性”を理解
単なるデータ検索ではなく、「誰が・どの案件で・どのドキュメントと関係しながら仕事しているか」という関係性を理解する点が特徴です。
Teamwork Graph ポータルが公開
Atlassianは Teamwork Graph を可視化する新ポータルも公開しました。
確認できた主な機能
① 個人化された作業ビュー
作成済Confluenceページ
Jiraチケット
関連共同作業者
リンクされたJira項目
などを統合表示。
② ユーザー別のデータ密度比較
アカウントごとのTeamwork Graph蓄積量や接続状況を比較可能。
③ MCP / CLI / Connector管理
単なる可視化ツールではなく、Teamwork Graphへの接続設定ハブとしても機能します。
Collections体系が完成 — 5本柱へ
Atlassianの製品体系は、以下の5つのCollectionに整理されました。
Software Collection
Service Collection
Teamwork Collection
Strategy Collection
Product Collection(新設)
新設:Product Collection
新設された Product Collection では、Jira Product Discovery(JPD)と、買収したAIフィードバック分析ツール「Cycle」が統合されました。
これにより、
Slack
CRM
サポートチケット
フィードバックフォーム
などに散在する顧客の声をAIで自動分類し、JPDの優先順位付けへ直接接続できるようになります。
単なる新製品ではなく、「Teamwork Graphを中心にした文脈戦略」の一部として位置付けられている点が重要です。
Service Collection:Jira Service Managementが大幅強化
Service Collectionは前年比30%以上の成長を記録し、Atlassianの中でも最重要カテゴリの1つになっています。
Team '26では、JSMを中心に大規模アップデートが発表されました。
JSM新機能:Solution Composer
「〇〇のサービスデスクを作って」で自動構築
Solution Composer(Coming Soon)は、自然言語だけでサービスデスクを自動生成する機能です。
例えば:
「人事オンボーディング用サービスデスクを作って」
と入力するだけで、
リクエストタイプ
ワークフロー
自動化ルール
AIエージェント
まで一括生成されます。
期待される効果
新サービス立ち上げ:数週間 → 数分
HR・法務・施設部門へのESM展開コスト削減
IT部門依存の軽減
Surveys with Rovo:AIがアンケートを自動生成
Surveys with Rovo(EAP開始済)では、意図を入力するだけで満足度アンケートを自動生成できます。
例:
「IT部門の対応満足度を5段階+自由記述で測りたい」
すると、Rovoが以下を自動生成:
設問
選択肢
回答形式
アンケート構成
サービス品質の可視化を、非常に低コストで開始できます。
Rovo Service:AIエージェントが業務を自律実行
Rovo Service(Now Available)は、AIチームメイトによるエンドツーエンド実行を実現します。
対象業務例:
アカウント発行
ソフトウェアプロビジョニング
アクセス管理
人事オンボーディング
社内問い合わせ対応
重要なのは、“完全自動化”ではなく「人間の確認を含む自律実行」である点です。
AIが実行し、人間が重要判断を担う設計思想が強調されました。
Workforce Optimization:サポート工数をAI最適化
Workforce Optimization(Closed Beta)は、サポートセンター運営向けの新機能です。
主な機能
シフト最適化
キャパシティ計画
混雑時間帯予測
ワークロード分析
サポート組織の運営効率化に大きな影響を与える可能性があります。
Incident Command Center:インシデント対応をAI化
Incident Command Center(Coming Soon)は、インシデント対応全体をAIで自動化する機能です。
想定フロー
インシデント発生
Rovo Ops が自動起動
GitHub / Datadog / New Relicログ収集
影響範囲(Blast Radius)可視化
根本原因を信頼度付き提示
Playbook自動生成
PIRをConfluenceへ自動起草
Jiraへ修正タスク自動追加
効果
Forrester調査では、Service Collection利用組織で「インシデント1件あたり平均55分削減」が報告されました。
Incident Prevention Center:「対応」から「予防」へ
Incident Prevention Center(Coming Soon)は、変更前にリスクを予測する機能です。
動作イメージ
デプロイ計画
過去変更との照合
類似障害分析
リスク予測
承認フロー推奨
Command Center(事後対応)と組み合わせることで、Atlassianは「障害対応」から「障害予防」へ移行しようとしています。
CSM + Assets 強化
Customer Service Management(CSM)
オムニチャネル対応
Coming Soonとして以下に対応予定:
WhatsApp
SMS
Voice AI
AIで解決できないケースは、人間エージェントへ文脈ごと引き継がれます。
Optimize:ナレッジ自動改善
AIが回答できなかった質問を蓄積
ナレッジギャップを特定
解決済みチケットからFAQ生成
Confluenceへ自動追加
「ナレッジが自然に育つ仕組み」の中心機能になりそうです。
Assets強化:Hardware Asset Management
Hardware Asset Management(Coming Soon)では、以下を一気通貫で管理可能になります。
購入申請
在庫確認
割当
保証期限追跡
廃棄
Excelや属人管理から脱却し、JSM上で資産ライフサイクルを統合管理できます。
さらに、Lansweeper Cloud-to-Cloud連携により、ネットワーク上のIT資産を自動検出してAssetsへ同期可能になります。
Rovo Chat MAX:質問回答から“仕事完遂”へ
Team '26で最も未来感のあった発表の1つが、Rovo Chat MAXモードです。
従来のAIチャットボットは「質問に答える」が中心でした。
一方MAXモードでは、
計画
推論
スキル選択
ツール実行
までを1クエリで自律的に実行します。
Team '26デモ事例
「20年以上付き合いのある顧客とのミーティング準備をして」
という依頼に対し、
Salesforce
Confluence
Jira
各種SaaS
を横断検索し、BI的チャート付きの顧客ブリーフィングを約3分で自動生成しました。
これは単なるAIチャットではなく、“仕事を完遂するエージェント”への進化を感じさせるデモでした。
Rovo Memory:AIに「記憶」を持たせる
Rovo Memoryは、AIがユーザーの文脈を継続的に学習する仕組みです。
暗黙記憶(Implicit Memory)
Teamwork Graph経由で:
よく関わる案件
よく使う資料
共同作業者
行動傾向
などを自動学習。
明示記憶(Explicit Memory)
ユーザー自身がルール登録可能。
例:
「この相手にはTL;DRを付ける」
「顧客名を匿名化する」
など。
単なる履歴保存ではなく、「一緒に働く同僚」としてAIを設計している点が印象的でした。
Agents in Jira:AIがJiraの正式メンバーに
Agents in Jira(GA)では、AIエージェントをJiraの担当者として正式アサイン可能になります。
可能になること
AIを担当者として設定
@メンションで呼び出し
ワークフロー自動実行
Jiraタスク更新
エージェントごとの監査ログ
対応予定
GA
GitHub Copilot
Coming Soon
Claude Code
Cursor
OpenAI Codex
「人とAIの混成チーム」が、Jira上で正式に管理される世界観が提示されました。
Rovo Studio GA:自然言語でAIエージェント作成
Rovo StudioがGAとなり、自然言語だけで以下を構築できるようになりました。
AIエージェント
Forgeアプリ
自動化ルール
例
「チケットが承認されたらSlack通知して担当者へ引き継いで」
という日本語を、そのまま自動化ルールへ変換可能。
導入事例
Mercedes-Benz
作業時間:85%削減
品質:90%向上
Intermedia
月50時間以上の工数削減
業務部門主導でAIアプリを作る“AIのDIY化”が一気に進んだ印象です。
Teamwork Graph進化:Code / Assets / MCP対応
参考リンク:
Codeカテゴリー追加
ソースコードもTeamwork Graphへインデックス可能に。
Code Search Connector
1,100万ファイル
15億行
を横断自然言語検索可能。
Claude Code接続時には:
回答品質:+44%
トークン消費:-48%
という改善も発表されました。
MCP Server + CLI対応
Atlassianは、MCP ServerとTeamwork Graph CLIを拡張。
これにより:
Figma
Claude Code
Cursor
など、外部AIツールからAtlassianの文脈を直接利用可能になります。
AIツールが「Atlassianの仕事文脈」を理解した状態で動けるようになる点が非常に大きな変化です。
セキュリティ・ガバナンス強化
AI利用拡大に合わせて、ガバナンス機能も強化されました。
Atlassian Guard
センシティブ情報検出
モデル到達前ブロック
データ分類
Agent Governance
AIエージェントごとに:
独立ID
権限スコープ
監査ログ
を管理可能。
AI監査ログ
AIアクション
スキル呼び出し
利用傾向
ROI分析
などを可視化できます。
Atlassian Isolated Cloud
Atlassian Isolated Cloud(Coming Soon)は、金融・医療・政府機関向けのシングルテナント環境です。
高いコンプライアンス要件を満たしながら、RovoやTeamwork Graphを利用可能になります。
ITSMへの現実的な活用ポイント
Team '26で印象的だったのは、「今すぐ始められる」機能が増えたことです。
まず試したい3つ
① Agents in Jira
Service Triageなど、初期トリアージ自動化から始めやすい。
② Rovo Studio
自然言語による自動化設計。
③ ナレッジ管理スキル
既存JSMチケットからConfluence KBを自動生成。
ナレッジが自然に育つ仕組みへ
今回のアップデート群を組み合わせることで、「ナレッジが自然に育つ仕組み」が見えてきました。
想定サイクル
JSMで問い合わせ対応
Surveys with Rovoで満足度測定
CSM OptimizeでFAQ生成
ConfluenceへKB追加
Rovoが新ナレッジを活用
Memoryで精度向上
従来の「人が頑張ってKBを書く」運用から、ナレッジが自然に循環する仕組みへ変わろうとしています。
まとめ
Atlassian Team '26は、単なるAI機能追加ではなく、“AIネイティブ組織”に向けた基盤再構築の年でした。
特に重要だったポイントは:
Teamwork Graphによる文脈戦略
Rovoエージェントの自律実行化
Service CollectionのAI統合
MCP / CLIによる外部AI連携
ガバナンス・監査強化
です。
今後は「AIを導入するか」ではなく、
“組織の文脈をどうAIへ渡すか”
が競争力になっていくと感じさせる内容でした。
Atlassian製品の導入・活用に関することは、INNOOV(イノーブ)にご相談ください。
Jira / Confluence / Jira Service Management 導入支援
Rovo活用・AIエージェント設計
ITSM / ESM運用設計
ナレッジ基盤構築
外部SaaS連携
Forge / 自動化支援
まで、トータルでご支援可能です。
お気軽にお問い合わせください。
※本記事は Atlassian Team '26(2026年5月開催)発表内容およびセッション情報をもとに作成しています。
※掲載内容は2026年5月時点の情報であり、今後変更される可能性があります。
