■ はじまり 〜地元での再出発〜
大学を卒業してから特に真面目に就職活動もせず、「一度実家に戻ろう」と地元へ帰りました。
*正直就職氷河期の世代で都内に行きたいと思えるような会社の求人はほとんどありませんでした。
実家の福岡に帰って、ハローワークで探してもらった家から通える税理士事務所に面接し採用され勤務することにしたものの、田舎の事務所で給料も安く、「このままじゃ先がないな」と感じていました。
ただ、税理士事務所がちょうどWindows系の会計パッケージに切り替えるプロジェクトを進めていたので会計システムにもなれることができました。当時はまだWindows3.1でしたが、ゲームが好きだったためいろんな設定をいじるのは好きでした。この時に既にIT機器については特に違和感なく触りだしていました。
■ 気づき 〜“ITに流れる”きっかけ〜
税理士事務所に勤めて一番の収穫だと思うことは実は会計事務所向けの会報誌みたいなものがあって、なぜか毎月ほとんどの記事を読んでいました。
その中でいろいろと今に繋がる記事を読んていたのですが、未来工業の改善活動等の記事はすごく面白く何回も読みました。おそらくこの改善活動みたいなもの30代以降の改善活動の興味の源泉になったと思います。
そんなある日、税理士業界の会報誌で1994年のアメリカの会計事務所事情の記事に目が留まりました。
「アメリカでは企業が会計システムの導入により、毎年5万人の会計関係職員や社員が削減されている」という内容です。手で行っていた作業が機械化され人が余っているというのを最初に読んだとき理解できなかったのですが、関連する記事を読んで機械化ってすごいんだなと理解しました。
それから「これはもう、会計じゃなくてシステム(当時はITと言わずにシステム)の時代なのでは」と思い調べてみると、2000年以降はIT人材の需要が5倍に伸びるという予測も見つかりました。
「これはもうITしかない」と確信し、税理士事務所を辞めて再び上京をしました。
上京後、足立区で住み込みでパチンコ屋のアルバイトをしながら、半年間プログラミングスクールに通いました。
■ スタート 〜IT業界への一歩〜
その後は、派遣会社を通じてIT関連の仕事に少しずつ関わるようになり、徐々にIT業界に足を踏み入れていきました。
30代前半は、今でいうフリーランスとしてSIerで政府系システムの運用支援などを担当。
Microsoftのメールサーバやロータスノーツ等の設定や運用を行っていました。
しかし、「技術だけでは業務知識が身につかない。このままだと40代で詰む」と危機感を抱き、35歳で転職活動を開始しました。
■ 転機 〜ビジネスを学ぶために自動車業界へ〜
転職相談をしたキャリアコンサルに「将来コンサルに行くのにビジネスの知識を一番身につけられる業界はどこか」と相談したところ、返ってきた答えは、「自動車業界がいい」というものでした。
*35歳で転職を考えた時、まだ何もコンサル業界のことを知らない状態でITコンサルは将来の目標となっていました。このころなんとなく、将来パソコン1台でコンサルティングをして仕事をしたいと思いだしていました。
その後、すぐにエージェント経由で求人を探してもらい、最初に面接を受けたのがFUSO。
そのまま採用され、結果的に10年以上在籍することになりました。
実はその時のキャリアコンサルからは紹介先としてSAPやコンサルティング会社、別の業界で大手IT部門等も候補に入っていましたが、FUSOを受けて1社目で決まってしまったため応募することはありませんでした。あの時別の順番で応募をしていたらまた違った人生になっていたと思います。
正直ITの経験もそこまであると思っていませんでしたが、けっこう書類は通るものなんだと思っていました。
今から思えば、短いながらも会計とITの経験があるのはレアな経歴だったのだろうと思います。
後で、キャリアコンサルに聞いた時にどういう部分で売っていけば良いかというのが、大した大学も出ず、なんとなく就職した税理士事務所の会計の経験でした。今では考えられないですが、当時ITは完全に学歴は不要で知識がある方が有利でした。
ちなみに、これまで面接や履歴書を出した会社は、アルバイトを含めても15社いかないくらい。たいてい1〜2社目で違和感がなければそのまま入社する、という流れが多かったです。就職氷河期の中正直運だけは良かったと思います。
■ 経験 〜10年間で得た幅広い経験〜
FUSOには業務知識を得るため「5年で辞めるつもり」で入社したのに、実際にはIT・人事総務・品質・国内販売など、さまざまな部署を経験しました。
とても濃く、成長の実感がある時間を過ごしました。どうせ辞めるつもりだったので2年おきに社内公募で部門を変えました。
その経験も今思えば良かったと思います。営業部門の改善活動から品質部門/人事とITでは会計システム/人事システムまで経験できたのは大きな経験で、今のプロセス改善等のコンサルティングにも大きく影響しています。
■ 起業への道 〜Atlassianとの出会い〜
ある程度の企業に10年も務めているといろいろと声がかかるもので、FUSOの最後の年に外資系企業からスカウトがあり、「転職してみるか」という軽い気持ちで新たなチャレンジしました。
その会社でAtlassianやアジャイル開発に出会い、これが現在のビジネスでの起業のヒントとなりました。
その後、1年間フリーランスのコンサルとして活動。
当時はSalesforceのISVとして工数管理システムを構築できないかと考えていましたが、Salesforceの技術面のハードルにぶつかり、そのときは一旦ペンディングにしました。*ちなみに工数管理システムのヒントは、現在のTeamspiritの創業初期の話を何かの記事で読んだのがきっかけでした。プラットフォームを使って製品が作れることを10年くらい前に始めてしりました。
この時、プラットフォームを活用したアジャイルな業務改善というアプローチならいけるのではとAtlassianのパートナービジネスに参入し、INNOOVを立ち上げることになります。
■ 今、思うこと 〜未来を探し続ける姿勢〜
振り返ると、最初に「ITが伸びる」と感じて動いたように、未来への方向性を掴むことが私のキャリアの原動力になってきたのかもしれません。
今では需要が増えていることはAIやロボット・ドローン等だと感じていますが、「伸びるからやる」だけではなく、自分が好きだとか自分の心が動かされる体験があるかが大事だと思っています。どこかにまた体験があるといつも思っています。
大学卒業からもうすぐ30年。
もちろん経験は増えましたが、今でも大事にしているのは、常に新しいことを探して、自分で体験し、それを誰かに届けること。
これからも、そんな働き方を続けていきたいと思っています。