🧠 ビジネス改革の本質とは?
― イギリス陸軍「20-40-40」戦略に学ぶ、割合の再構築という視点 ―
「ビジネス改革」と聞いて、何を思い浮かべますか?
システムの刷新?組織構造の見直し?もしくはAIの導入やDX推進でしょうか。確かにどれも正解です。しかし、その裏にはもっとシンプルで汎用的な思考軸があります。
それが「全体を構成する要素の割合を再構築する」という考え方です。
この考え方は、軍事戦略の世界でも如実に表れています。
🎖 イギリス陸軍の「20-40-40」戦略とは?
イギリス陸軍は、近年「20-40-40」という新たな戦力配分戦略を打ち出しました。
この戦略は、2024年2月、イギリス国防省により「UK Defence Drone Strategy」で発表されたものです。
この戦略では、陸・海・空の各軍種で無人システムを統一的に導入し、迅速な実験・評価・配備を目指しています。特に、ウクライナ戦争でのドローンの活用から得られた教訓を活かし、低コストで効果的な無人機の導入が重視されています。
「20-40-40」とは戦略配分の比率
20%:戦車などの重装備(従来型)
40%:使い捨て型のドローンや精密ミサイル(コスト効率型)
40%:再利用可能な高性能ドローン(戦略投資型)
この構成の意図は明確です。ウクライナ戦争をはじめとする現代戦で、「機動力と即応性が勝敗を分ける」ことが明らかになり、重厚長大な戦力に依存する従来型の戦い方が通用しなくなったのです。
イギリス陸軍は単に「ドローンを導入した」のではなく、「戦力構成の割合そのものを根本から組み替えた」という点が重要です。ただこの戦略構成は割合であって従来型の重装備の予算がそのまま現在の予算で削られるのではなく、対戦する相手の戦力によっては重装備の予算規模は縮小せずドローン等の追加がされると考えられます。
🏢 では、ビジネスではどうか?
この「割合の再構成」こそが、ビジネス改革にも直結します。例えば:
【1】人員構成の最適化
以前:90%が営業、10%がCS
改革後:営業60%、CS40%(LTV重視に転換)*AIの支援を含む
【2】プロダクト投資の再配分
以前:新機能80%、バグ修正10%、顧客要望対応10%
改革後:顧客要望40%、信頼性向上30%、新機能30%
【3】プラットフォームの再構成
以前:オンプレミス中心、SaaSは補助的
改革後:SaaSファースト、必要な領域だけオンプレを活用(インフラ人材の縮小)
【4】問い合わせ対応の再設計(AI導入による構成変更)
以前:CS・社内ヘルプデスクの対応は100%人手
改革後:
AIチャットボット・エージェントによる一次対応や解決:40%
定型化されたFAQによる解決:30%
人による個別・例外対応:30%
🎯 本質は、「何を実現したいか」から逆算する設計
つまり、新しいツールを導入することが改革なのではありません。
目的はあくまで、「LTVを上げたい」「CS対応を高速化したい」「コストを最適化したい」など、達成したい成果にあります。
“何をやるか”ではなく、“何を実現したいのか”に合わせて構成比率を設計し直すこと。がビジネス改革だと考えます。
🔧 ツールは“目的”ではなく“手段”
結果として、ツールの導入が改革における具体的な作業の一部となることはあります。
しかし重要なのは、そのツール導入自体をゴール化しないことです。
✍ おわりに
イギリス陸軍の20-40-40は、ドローンというテクノロジー導入の話ではなく、戦い方の“割合”の再構成という戦略的意思決定です。
これは、ビジネスでも全く同じ。新しい武器(=ツール)を導入するだけでなく、組織の時間・人・お金・労力の「配分比率」を問い直すことが、真の改革につながります。